「ARCHIMBUTO」

「ARCHIMBUTO」

ARCHIMBUTOはミラノ出身の建築家Cino Zucchiがデザインし、De Castelliがスポンサーも兼ねて制作したものです。来る第14回ヴェネツィア国際建築展のイタリア館には大きな期待が寄せられており、トレヴィーゾの工場から直接送られてきた資材でイタリア館の外側に強いインパクトのある入り口が作られました。MiBACT(イタリア文化活動省)からの任命でイタリア館のキュレーターを務めるCino Zucchiは、酸化処理を施したコルテン鋼で巨大な扉口を創るプロジェクトを展開しました。建物の本来の入り口を漏斗のように囲む形で来場者を迎えることから、愛着を込めて「Archimbuto」(大漏斗)のニックネームで呼ばれるこの扉口は、グレー、茶色、青みがかった色という鉄の多様な色彩を引き立てる特別の仕上げを施し、金属が秘める表現力を発揮させています。ミラノ出身の建築家Cino Zucchiとヴェネト州に拠点を置くDe Castelli社は、2年前の第13回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展で既に共同で「Copycat. Empathy and Envy as form-makers」と題するインスタレーションを制作し、イタリアからの出展プロジェクトで唯一、国際審査員から選外佳作賞を獲得しましたが、本プロジェクトは両者のその深い共感をさらに発展させたものです。今年の展示は、Zucchiがデザインした扉口のロケーションが18世紀にヤコポ・サンソヴィーノの設計で建造された巨大な艇庫「ガジャンドレ」の裏手にあり、しかも最近MiBACTにより修復された19世紀の金属製油圧クレーンの近くという素晴らしい場所であることをDe Castelliが意識しただけでなく、ヴェネト州のコルヌーダにAlbino Celatoによって設立されて以来同社を根本的に特徴づけてきた探求意欲‐職人による製造工程のイノベーションを通じて金属の幅広い表現力の可能性を探ること‐を掻き立てました。De Castelli社は、鍛冶業に携わって3代目という伝統的家業による製品を、通常のやり方から敢えて外れて、まったく現代的な感覚で提供しようとしています。建築・デザイン的感覚で、業界最先端のフロンティアとヴェネト州の山岳地帯の麓で培った高度な職人技を合わせて磨き上げ、イタリア内外のデザイナーとのコラボレーションをも得て、今までにない仕上げや製造工程を編み出しています。大きな曲線を描くイタリア館の扉口は、Zucchiをキュレーターとして「Innesti_Grafting」と題した展示への来場者を迎え入れながら「視覚的なアンプ」として機能し、2014年のビエンナーレのディレクターを務めたRem Koolhaasから各国のパビリオンへ提案された近代の影響についての考察をイタリアという環境で掘り下げていきます。セメントの土台に固定され、163枚ものパネル、10メートルの高さと6トンの重さという規模で繰り広げられたこの扉口は、この展覧会の題目を具現化したものです。現代の創造力をアルセナーレという由緒ある美しい遺産に「接ぎ木」し、会場の内側と外側を「リンク」させ、この展示会場の中でも来場者が最も隔離された内観的な見学コースを楽しめる環境を提供します。

建築家 Cino Zucchi
場所 第14回 ヴェネツィア国際建築展
2014
写真提供 Federico Barin