V.A.C. STAIRCASE
このプロジェクトの主役を演じるのは、職人の手でカスタムな処理を施して独特の明暗効果を出した素朴な鉄です。この処理の特徴は、通常ならば鉄工所に依頼すべきプロセスを職人の手に委ねたことです。厚さ15 mmの板金を選び、レーザーで切断してそれぞれ嵌め込みながら組み立てました。溶接を殆どせずに一片一片を接ぎ木のように組んでつくりあげたコンポジションには、組み立てブロック玩具を思わせるものがあります。壁面を仕上げるボワズリーには、DeLabré B処理を施した鉄が使われており、階段に使われたカスタム仕様の仕上げと比べると、やや均一な色となっています。ここで注目すべきなのは、壁に窓口を設けて消火装置を隠している点です。階段の中側のガラス板は、鉄製の手すりを支持する構造的役割を果たしています。そのため、ガラス、鉄、石が共存する形で、互いに交差しながら一つの構造を作り上げているのです。
建築家 Alessandro Pedron
場所 ヴェネツィア
年 2017
写真提供 Alessandra Chemollo