ECHO PAVILION

ECHO PAVILION

ひっそりと孤独に佇みながら、人の言葉をただ鸚鵡返しに繰り返すことしかできない蛹のようなパビリオン。こだまのように周囲の歴史を反響する建造物。広がったり縮まったりしながら見え隠れするその構造は、しっかりとした形なのに確とは掴みきれません。騙し絵のような存在で、既存のバロック様式の宮殿の大きさに共鳴します。2段のシルエットで構成されたこの(パンドラの壺を思わせるような)魔法の箱には、1:1の比率で宮殿の中庭が映ります。中庭の形に合わせて中央に配置されたこの箱の一階は、一辺が5メートルで4つの入り口のある立方体です。上階はピラミッドを逆さまにした形で、上に行くにしたがって四辺が最大10メートルまで広がっています。上部の輪郭は1:2の比率で傾斜しながら中庭の四隅へ向かって広がります。構造物全体に光沢ステンレス鋼板が張られているので、まさに鏡として石を敷いた床や柱や後ろの回廊を映し出します。極めてシンプルなパビリオンですが、370年の歴史をもつ宮殿の落ち着いた美しさを映してとらえたその姿は、幻想的にすら感じられます。パビリオンに近づく来場者を待ち受けているのは予想外の構造です。見上げると、思いのほか急な傾斜の天井に自分の姿が映り、はっとします。パビリオンの中へ入ると、がっちりとしたスチール製の格子が目に入りますが、重そうな印象はたちまち消えて、絶えず変わる空の様子が見えてきます。

建築家 Mauricio Pezo, Sofia von Ellrichshausen
場所 Palazzo Litta, Milano
2019
写真提供 Pezo von Ellrichshausen